第二章:ビトルボ第二世紀(デ・トマソ後期)
1989年当たりから、ボディ外観、内装意匠、エンジン、駆動系、足回りを大幅に変更した、ビトルボ系第二世紀に入ります。そのマイナーチェンジ(メーカーとしてはフルモデルチェンジと受け取って欲しかったのでしょう・・・)は2ドア系、4ドア系、スパイダー
の全てのモデルに及び、モデル名のはじめに付くビトルボの名前が消滅しました。それからというもの、日本に於けるビトルボ系は3桁の番号のみによる呼び名がスタンダードとなりますが、この3桁番号のネーミングが後に車種体系をわかりにくくする要因となる
(これについては後述します)のでした。また、スペシャルモデルには伝統の「風の名前」が復活(これは歓迎!)してきます。
ボディ外観の変更
・スラントノーズ先端のエッジ立て工作を省略、ノーズ先端が丸みをおび、薄くなった。
・グリル枠の角がとれ、ネット部が格子型の樹脂製から金属メッシュタイプになった。
・左右フロントフェンダー先端ヘッドライトケース下部のボディ造形を省略。
・左右ドアミラーの形状が変更され電動リモコン化された。
・サブマフラー増設、エキゾースト後部の2分割に伴い4本のメッキ管が後部バンパー下部
からのぞくようになった。
・アルミホイールが従来の14インチから15インチのディッシュタイプに変更。
・主に、90年頃に出回ったモデルより、トランクに張られた「MASERATI」ロゴエンブレムが
立体的造形となり、妖しく反射するようになる。
内装意匠の変更
・全体的なイメージは従来型を継承しつつアレンジ。
・アルカンタラ(合成スエード)の多用(特にシート部)。
・従来平板な感じであったウッドパネルが立体的造形になり、質感、色調共に、より一層
ゴージャス感漂う物に変更(一部従来型パネルの過渡期モデルも存在)。
・オートエアコンの採用に伴い、センターコンソール部のデザインが変更。
・金時計の厚みが増した。
エンジンの変更
・基本設計は踏襲しながら、排気量を2.5リッターから2.8リッターにアップ。
低速域の使い勝手が従来以上に向上し、大幅なパワーアップも同時に果たした。
・ 2.5リッターエンジンはカムカバーが黒い結晶塗装(ちりめん模様)であったのに対し、
2.8リッターエンジンは、赤い結晶塗装が施されたのがエンジン外観上の特徴。
これにより、エンジンルーム内の景観は一層美しい見せ場となった。
・エミッションコントロール(排ガス対策)のために従来装備されていたエアポンプなどが
省略された。これによりエンジン前方の整備性が格段に向上した。
駆動系の変更
・従来3速であった、オートマティックトランスミッションが、待望の4速化。
・従来センシトルクと呼ばれたデファレンシャルギアがレンジャーデフと呼ばれる対策型
に変更。
足回りの変更
・フロントの足回りがメカニカアッティバと呼ばれる新形式に変更。これにより、従来過大で
あった回転半径が減少し、取り回しが楽になった。
・アルミホイールが従来の14インチから15インチのディッシュタイプに変更。
尚、この章では上記の特徴を併せ持つモデルを説明の便宜上「新規格車」と呼称します。
また、車名や型式番号の変更も無く、次々と仕様変更を繰り返す「430」並びに「スパイダ
ーザガート」は便宜上次の様に分類呼称することと致します。
「430初期型」「430前期型」「430後期型」「430最終型」
「スパイダーザガート初期型」「同前期型」「同後期型」「同最終型」
1989年 228(MT)発売[945万円]
2.8リッターの「新規格車」先行発売。
ロングホイールベースの大型ビトルボが登場。日本での228デビュー時は2ドアで2.8
リッターの車はこの車だけだったので、まだ車名と現車仕様の整合性はとれていました。
ビトルボ一族中もっともラグジュアリー且つ大柄な車であり、上位モデルのロイヤル(V8)
とビトルボの間のセグメントを埋めるモデルでした。写真で一見すると「鈍」な印象を受け
ますが、実物は低く身構えた精悍なフォルムで、細かいところもグレードアップされており、
さすがはマセラティと我々を唸らせる名車。ボディの剛性感もガッチリした感じで、実にいい。
日本では、発売当初はマニュアルミッション設定しかありませんでした。
カリフ 発売[745万円]
ビトルボSi 価格改定[695万円が595万円に]
ビトルボ425i 価格改定[735万円が635万円に]
ビトルボスパイダー 価格改定[690万円が630万円に]
228(MT) 価格改定[945万円が830万円に]
2.8リッターの「新規格車」第二弾。
ビトルボ系で初めて伝統の「風の名前」を頂くカリフが出現。実体はスパイダーザガートの
ハードトップ版スペシャル。ショートホイールベースの短いボディにちょこんと載ったキャビン
が印象的な「小股の切れ上がったいい女」といった風情が漂うおしゃれな車。ある意味で
この時期のビトルボ系を代表する名機として、メーカーも「後世に残る車」と標榜してました。
そもそも、オープントップのスパイダー用として生まれたモノコックシャーシやボディ各部材に
各部補強対策を施されたモノに「屋根」をくっ付けてますから、ボディ剛性はビトルボ一族で
随一。操縦に自信のあるドライバーならば、ワインディングでも痛快無比のマシンです。
尚、狭いながらも立派な革装リアシートがついていますが、残念ながら、国内法規により、
ディーラー車では、二人乗り登録となっております。
この時点で、在庫現行車種は大幅値下げ、後続新規格車の発表をうけてのものでしょう。
222E (MT/AT)発売[620万円(MT)/635万円(AT)]
2.8リッター「新規格車」の真打上陸。
ついにスタンダードモデルも新規格にモデルチェンジ。2ドアで2.8リッターなのに222・・・
この辺から訳が解らなくなってきます。実質的にはビトルボSiの後継機と見るべき車。
尚、末尾の「E」は「EXPORT」の「E」でこの時点では輸出仕様であることのあらわれと
見ることができます(ちなみに本国では単に「222」と呼称)。
スパイダーザガート初期型 (MT/AT)発売[630万円(MT)/645万円(AT)]
スパイダーザガート前期型 (MT/AT)発売[630万円(MT)/645万円(AT)]
スパイダーも「新規格車」に。
ビトルボスパイダーiの実質的後継機。が、ビトルボ時代にも左右のフロントフェンダー部に
[ZAGATO]エンブレムが張ってあるため、中古車市場でも混乱している模様です。
ビトルボスパイダーをスパイダーザガートとして販売しているケースは、かつて頻繁に見掛け
たものです。尚、スパイダーザガートの呼称は日本独自の源氏名で、国際的には単に
「マセラティ スパイダーi」と呼ばれている模様。また、上記の(初期型)・(前期型)の区分
は詳細説明を参照して下さい。
228 (AT)発売[825万円]
大型ビトルボ228にも待望の4速オートマティックトランスミッション装備車がデビュー。
すでに国際的には3速AT車は存在していまいたが、国内では4速装備を待った模様。
この後は基本的に4速AT車のみの供給となりました。
430初期型 (AT)発売[735万円]
4ドアモデルも「新規格車」化。
4ドアで2.8リッターなのに430・・・(泣)。
ビトルボ425iの実質的な後継機。日本発売当初のモデルはどういうわけか全数US向け
仕様であり、パッシブシートベルトなどの特徴的な装備が付属しています(詳細説明参照)。
89年段階では価格表にも載っていず、サンプル輸入車の先行販売とも考えられます。
1990年 222SE (MT/AT)発売[685万円(MT)/695万円(AT)]
スパイダーザガート後期型 (MT/AT)発売[735万円(MT)/745万円(AT)]
カリフ 価格改定[745万円が795万円に]
2ドア車が早くもマイナーチェンジ。主に外装イメージの変更が行われました。この変更に
伴い、2ドアのスタンダードモデル222Eは222SEと名前を変えました。変更点は前後の
バンパー等ですが、詳しくはそれぞれの詳細説明を御参照下さい。
228 価格改定[825万円が865万円に]
228の内装が若干リファイン(これが後期型で、メータークラスター内にウッドパネルが貼
られたりした。各部の機構的な違いは無いといってよい。)され、それに伴う価格改定か?
1991年 430前期型 (AT)発売[735万円]
この「430前期型」と呼称するモデルはマセラティの外装デザインコンポーネンツ区分では
2ドアスタンダード車では222Eに相対するものです。但し、前後バンパーの上面には
全幅に亘ってステンレス製のガーニッシュが張られ、2ドア車とイメージを代える事に成功
しています。また、「430初期型」の特徴であった「US仕様」の要素がすべて取り除かれ、
内外装がシンプルになりました。
シャマル (6MT)発売[1385万円]
ビトルボ系「風の名前」シリーズ第二弾にして、最速、最強の硬派なモデル。その心臓部
はV8のDOHCツインターボ。その身に纏うボディはマルチェロ・ガンディーニの手により
デザインされた(この人はあのランボルギーニカウンタックをデザインした人です)マッシブ
なもの。街乗りも出来る穏やかさと、カミソリの切れ味、シャープな吹け上がりの二面性が
際立ちます。縦横比バランスの妙が効いて、ワインディングでの走りもエキサイティング!
ホイールベースはスパイダーやカリフと軌を一にするため、当店での分類上ではこれらの
派生型としています。発売当時「マセラティひさびさのスーパースポーツ」として大反響
を呼びましたが、私個人としては「マセラティ シュバスコ」や「マセラティ バルケッタ」等、
ミッドシップリアルスポーツモデルが発売にならなかった事が悔やまれてなりません。
尚、シャマルの本格的供給は翌92年からです。
1992年 222SR (AT)発売[695万円]
222 4V (MT)発売[785万円]
430後期型 (AT)発売[765万円]
フラッグシップモデルたるシャマルの登場を受けて、そのデザインイメージを巧みに取り入れ
た222SRが誕生。また、222 4VはSRと共用のボディに待望のV6DOHCユニットを
搭載する後のギブリへの布石となる車。一時期発売の噂があった「マセラティ バルケッタ」
やシャマルに装備されたものと同一イメージの16インチの星形ホイールが標準装備。
一方、430の方はようやく222SEに相対するデザインイメージを持つ「後期型」に改変。
トランクにチョコンと載った小さなリアスポイラーやAte製ABS(これは、デ・トマソ期ビトルボの
中でも、後期型以降の430のみに装着)なども装備するようになりました。
1993年 222SR (AT)価格改定[695万円が595万円に]
430後期型 (AT)価格改定[765万円が695万円に]
スパイダーザガート (AT)価格改定[745万円が685万円に]
カリフ (MT)価格改定[795万円が845万円に]
228 (AT)価格改定[865万円が795万円に]
シャマル (MT)価格改定[1385万円が1180万円に]