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マセラティに乗りませんか・・・マセラティ3200GT,マセラティギブリ,マセラティクアトロポルテ,マセラティシャマル,マセラティ222,マセラティ430など、ビトルボ期マセラティ各車の変遷と総合解説

マセラティ各車の変遷と総合解説~前書きにかえて

 初めて、マセラティ車に興味を持たれたときに最初にぶちあたる壁・・・。

 「まーず、マセラティの車種構成はほんとーにわかりにくい!」というのが皆さんの本音ではなかろうかと思います。現代のマセラティにおいても、基本は4ドア車の「クアトロポルテ (5代目:ピニンファリナボディ)」と2ドア車の「グランツーリスモ」の二つの車型に大別されますが、特に現行クアトロポルテでは、排気量の違いのみならず、多数あるオプション装備品 を組み合わせたパッケージ装備車を「スポーツGT」「エグゼクティブGT」などと呼称するので、それが中古車になった時、オプション装備を含めた細かい仕様の全貌を把握するのは容易ではないのですが、 時代を遡った往年のデ・トマソ期ビトルボ系マセラティにおいては、特に2.8リッターエンジン搭載車以降は、まったくもって、全然わけがわかりません。従来、一般の中古車販売店や中古車買取店も、 その正確なところは、ほとんど理解していなかったのが実状ではなかったかと思われます(かなり昔、当店では大手中古車買取店の本社査定部から、マセラティの年式判別や状態判別法を教えてくれと、 わざわざ訪問を受けたことがあります)。

 原因は色々と考えられますが・・・、

1)どの車種も日本に於ける流通量が他に比べ圧倒的に少ない(現車に触れるチャンスが少ない)。
2)場当たり的なネーミングや些細なマイナーチェンジのため、統合的に把握しにくい。
3)超短期間少量販売の過渡期モデルが存在する(こういったモデルにはカタログも存在しない)。
4)特にマイナーチェンジを施されても、国土交通省に届ける型式番号の変更がない(ということは車検証では判別不能)。
5)この日本の中古車業界では「マセラティの年式表示は当該ディーラーの初年度登録年を以て年式とする」慣例があり、往々にして本国のモデルイヤーと初年度登録年の関連性が薄い(例え ば、仮に「94年式のマセラティ430」と云っても、ある特定製造時期の仕様を意味しないから現車を確認しないと、どれなのか判定できない(但、シリアルナンバーからある程度の推測は可能)。
6)ディストリビューター(ディーラー)の諸事情により、メーカーの製造時期と国内の初年度登録年に、大きい隔たりのある個体が多数存在する(これは上記5に関連して更に話をややこしくしている)。
7)しかも、マセラティは自動車雑誌などに頻繁に取り上げられなかったため、こういった細かい仕様の違いを把握する文献が乏しい。

 これでは、どれを買っていいのか、わかる訳がありませんね。事実、当店には、具体的な車名を指定すること無く、「なんとなく、マセラティが欲しくなった」的なことを云いながら来店する新規のお客さんが大勢いらっしゃいます。自分が欲しいモノがわからない(笑)。
 ほとんど、禅問答のような、かかる事態を解消するために、まずは一度、以下の「箇条書き」を概略頭に入れてから、当コーナーを読み進めて頂けますと、「本当に自分の欲しいマセラティはどれなのか」という大命題に、どなた様も正しい答えを導き出せそうです。


  • マセラティ3200GT(マセラティ3200GT)
  • マセラティクアトロポルテ エボルツオーネ(マセラティクアトロポルテエボルツオーネ)
  • マセラティクアトロポルテ(マセラティクアトロポルテ)
  • マセラティギブリ ギブリカップ(マセラティギブリカップ)
  • マセラティシャマル(マセラティシャマル)
  • マセラティカリフ(マセラティカリフ)
  • マセラティスパイダーザガート(マセラティスパイダーザガート)
  • マセラティ222(マセラティ222SE)
  • マセラティ430(マセラティ430)
  • マセラティ228(マセラティ228)
  • マセラティビトルボ(マセラティビトルボ)
  • マセラティビトルボスパイダー
  • マセラティビトルボ425
  • マセラティでイッてみよう!:2
  • マイクロ・デポ株式会社 マセラティと旧車の専門店 〒179-0071 東京都練馬区旭町1-41-16 TEL:03-5968-4717 FAX:03-5968-4718

ビトルボ系マセラティの系譜概観

①:ビトルボ創世記(デ・トマソ前期)
2ドアクーペ:ビトルボ・ビトルボ2.5・ビトルボE・ビトルボES・ビトルボSi・ビトルボSiブラック
2ドアコンバーチブル:ビトルボスパイダー・ビトルボスパイダーi
4ドアサルーン:425・425i

②:ビトルボ第2世紀(デ・トマソ後期)
レギュラーホイールベース2ドアクーペ:222E・222SE・222SR(前期型・後期型)・2224v
ショートホイールベース2ドアクーペ:カリフ・シャマル
ロングホイールベース2ドアクーペ:228(前期型・後期型)
ショートホイールベース2ドアコンバーチブル:スパイダーザガート(初期型・前期型・後期型・最終型)
4ドアサルーン:430(初期型・前期型・後期型・最終型)

③:ビトルボ新世紀(第一次フィアット期)
レギュラーホイールベース2ドアクーペ:ギブリ(2代目:初期型・前期型・後期型・最終型・GT・カップ)
4ドアサルーン:クアトロポルテ(4代目:初期型・前期型・後期型)
☆クアトロポルテ後期型には、2.8リッターV6エンジン搭載車と3.2リッターV8エンジン搭載車が存在する。

④:ビトルボ超世紀(フェラーリ期)
2ドアクーペ:3200GT(前期型・後期型)・同アセットコルサ
4ドアサルーン:クアトロポルテエボルツオーネ・同コーンズセリエスペチアーレ(一次ロット・二次ロット)
☆エボルツオーネにも、2.8リッターV6エンジン搭載車と3.2リッターV8エンジン搭載車が存在する。

 さあ、なんとなくではありますが、「あなたにピッタリのマセラティ像」は見えてきましたでしょうか。そこで、あえて不完全なのは充分承知の上、日本国内に正規ルートで流通したビトルボ系マセラティについて、 これからワタシ(岡本長兄)の力の及ぶ限り、できるだけ詳しい解説をお届けいたします。当コーナーでは、まず全体の流れを、登場時系列順に概説致します。その中で車種名表示は色を替えてありますので、各車種ごとに突っ込んだ詳細説明とスペックについては、そちらをクリックしてご参照下さい。
 尚、本国並びに国際的に流通したモデルについては、仕向地別の相違やネーミングの違い、過渡期型が多数存在するなど、難解を極めるため、まだまだ研究途上であります。いつの日かそうとう余裕ができたら発表させて頂きます(もはや老後の楽しみ?!)。
 又、車名の後ろに当時の参考新車価格を明示致しました。できるだけ正確を期したつもりですが、何分にも参考資料の正確度がつかみづらいので、新価格の実施時期等、実際とは異なっている可能性がありますことを予めご了承ください。
 以下の各分類については、当店が数多くの現車を扱ってきた(そしてそのどれをもバラバラにした)経験により判明した部分を加味してあり、従来発表されてきた諸文献や、本国メーカー及び歴代各ディーラーの見解とは異なっている可能性は多分にありますが、 当コーナーの趣旨が主に「流通して多年を経過した旧車としての、ビトルボ系マセラティへの理解をできるだけ正しく深めて頂くこと」にある関係上、初めてビトルボ系マセラティに触れる方でも、ある程度の判断材料にして頂ける様に実践的な内容を心がけたつもりです。

 それでは、イッてみよー!

ビトルボ系マセラティの歩み

第一章:ビトルボ創世記(デ・トマソ前期)

 70年代を通じてマセラティ社はフランスのシトロエン社と提携関係にありましたが、シトロエン社自身の経営悪化に伴い、慢性的に経営が破綻している(号泣)マセラティ社との提携関係は当然のごとく、 いともあっさりと(笑)解消され、マセラティ社はいよいよ窮地に立たされました。で、この辺が面白いところなんですが、こういったヨーロッパの名門ブランドが消滅しそうになると、必ず、そのブランドネームの火を絶やすのを惜しみ、 私財を投じて助けてくれる人物や企業体があらわれてくるんですね。スゴイ場合は国が助けちゃう場合もよくありました(もっともこの場合は政策上の問題もあってのことですが)。たとえば、英国のアストンマーチンなんかはマセラティとよく似た成り立ちで 何度も助かっていますね。で、この時のマセラティを救ってくれたのは、なぜかアルゼンチン人でデ・トマソグループの総帥アレッサンドロ・デ・トマソさんだったわけです。この人はその昔レーシングドライバーでして、栄光のマセラティワークスチームに 在籍経験があった機縁から、このブランドの救助に立ち上がってくださいました。

 引継ぎ当初は、当時細々と製造していたメラクSSやカムシンをやっぱり細々と(笑)作りながらようすを伺っていましたが、そのうち手持ちのデ・トマソロンシャン(こんな車知ってます?)のコンポーネンツにマセラティ製V8エンジンを搭載して急造した キャラミを発売(不人気に終わる・・・泣)、ついで全くの新型として、クアトロポルテ(3代目:ジウジアーロデザインのでかいアレ)を世に送りだしました(こちらはそこそこ人気が出て、途中でロイヤルに発展し長寿モデルになりました)。 しかしまあ、こんな超少量生産車ばかりでは当然いつまでたっても食えません。そこで登場するのがビトルボ系というわけです。

(ビトルボ系マセラティ誕生のより詳細ないきさつを知りたい向きはマイクロ・デポのマセラティ擁護をご参照あれ)


1982年 ビトルボ初上陸
 1981年12月の発表以来、日本初入荷が待たれたビトルボがついに上陸。
マセラティ車としては非常に珍しい、コンパクトな2ドアスポーツクーペとしてデビュー。
 排気量こそは2リッターと、それまでのマセラティと聞いてイメージする車格と比べれば小さいですが、そこはさすがにマセラティ、この車には世界初のツインターボ市販車という栄誉を担わせています。
 意外と思われるかも知れませんが、この時期に入荷していた原初のビトルボは本革シートではありません。独特のファブリックシートは得も言われぬ触感で、今思えば非常に好ましいものでした。このプレーンなビトルボは、現在の日本国内ではほぼ絶滅に等しいのが残念でなりません。


1983年 ビトルボ2.5 [658万円]
 9月のフランクフルトショーで初出品され、同じ秋に開催されていた東京モーターショーにも姿を現したビトルボの事実上の輸出仕様です。基本的には内外装の変更はないようです。
このタイプがこの後のスタンダードモデルとなります。


1985年 ビトルボE 発売[685万円]
       ビトルボ425 発売[695万円]
       ビトルボ2.5 価格改定[658万円が635万円に]
 シリーズに初のラインナップ車種が追加。
 ビトルボEは、従来のビトルボに本革シートを装備するなど豪華な内装に仕立て(でも、まだ金時計はおあずけ)、サスペンションを強化 したモデル。
 ビトルボ425は待望の4ドアモデルです(このモデルに初めて皆さんご存じの金時計を標準装備!)。
 これらの車種の追加に伴い、従来型のビトルボ2.5と呼ばれてきたモデルは廉価版扱いとなり、 値下げが行われました。尚、この時期のモデルは全車マニュアルミッション車でパワーステアリングも通常は未装備でした。
 また、425とは「4ドアで2.5リッター」であるところからネーミングされたものであると思われます。


1987年 ビトルボES (MT/AT)発売[655万円(MT)/685万円(AT)]
       ビトルボ425 (AT)発売[695万円]
       ビトルボスパイダー 発売[690万円(AT)]
       ビトルボ2.5 価格改定[635万円が565万円に]
       ビトルボ425 (MT)価格改定[695万円が675万円に]
 今度のトピックスは3速オートマティックミッション車の出現とコンバーティブルモデルたるスパイダーのデビューです。また従来のビトルボEからインタークーラーを装備し、ついに金時計を付けたビトルボESへと進化。といったわけで、 単なるビトルボはさらに超廉価版となり(泣笑)、いよいよお買得な車となりました。またATの425出現に伴い、従来からあったMTのビトルボ425は若干の値下げとなった模様です。


      

1988年 ビトルボSi 発売[695万円]
       ビトルボSiブラック 発売[715万円]
       ビトルボ425i 発売[735万円]
 ついに念願のフューエルインジェクション装備車が2ドア、4ドア併せて出現。最高出力などは若干抑えられ、幾分マイルドな性格になったものの、特に冷間始動時の扱い易さの向上などにより、ようやく女性でもつき合える近代的な車になりました。
 また、インジェクション全車にインタークーラーを装備し、その取付位置もラジエター前方に要領よく納められるように改善されました。
尚、「仮面ライダー」みたいな変なネーミングの「ビトルボSiブラック」は後の222Eに準ずる新規格の本革内装を持つ過渡期モデル。
 また、88年後半頃、ビトルボスパイダーi なる過渡期モデルが極く少数販売されましたが、これは従来のビトルボスパイダーに上記のフューエルインジェクションを装備しただけのクルマ(スパイダーザガートの原型とは云える)であります。


第二章:ビトルボ第二世紀(デ・トマソ後期)

 1989年当たりから、ボディ外観、内装意匠、エンジン、駆動系、足回りを大幅に変更した、ビトルボ系第二世紀に入ります。そのマイナーチェンジ(メーカーとしてはフルモデルチェンジと受け取って欲しかったのでしょう・・・)は2ドア系、4ドア系、スパイダー の全てのモデルに及び、モデル名のはじめに付くビトルボの名前が消滅しました。それからというもの、日本に於けるビトルボ系は3桁の番号のみによる呼び名がスタンダードとなりますが、この3桁番号のネーミングが後に車種体系をわかりにくくする要因となる (これについては後述します)のでした。また、スペシャルモデルには伝統の「風の名前」が復活(これは歓迎!)してきます。


      ボディ外観の変更
      ・スラントノーズ先端のエッジ立て工作を省略、ノーズ先端が丸みをおび、薄くなった。
      ・グリル枠の角がとれ、ネット部が格子型の樹脂製から金属メッシュタイプになった。
      ・左右フロントフェンダー先端ヘッドライトケース下部のボディ造形を省略。
      ・左右ドアミラーの形状が変更され電動リモコン化された。
      ・サブマフラー増設、エキゾースト後部の2分割に伴い4本のメッキ管が後部バンパー下部
       からのぞくようになった。
      ・アルミホイールが従来の14インチから15インチのディッシュタイプに変更。
      ・主に、90年頃に出回ったモデルより、トランクに張られた「MASERATI」ロゴエンブレムが
       立体的造形となり、妖しく反射するようになる。

      内装意匠の変更
      ・全体的なイメージは従来型を継承しつつアレンジ。
      ・アルカンタラ(合成スエード)の多用(特にシート部)。
      ・従来平板な感じであったウッドパネルが立体的造形になり、質感、色調共に、より一層
       ゴージャス感漂う物に変更(一部従来型パネルの過渡期モデルも存在)。
      ・オートエアコンの採用に伴い、センターコンソール部のデザインが変更。
      ・金時計の厚みが増した。

      エンジンの変更
      ・基本設計は踏襲しながら、排気量を2.5リッターから2.8リッターにアップ。
        低速域の使い勝手が従来以上に向上し、大幅なパワーアップも同時に果たした。
       ・ 2.5リッターエンジンはカムカバーが黒い結晶塗装(ちりめん模様)であったのに対し、
        2.8リッターエンジンは、赤い結晶塗装が施されたのがエンジン外観上の特徴。
       これにより、エンジンルーム内の景観は一層美しい見せ場となった。
      ・エミッションコントロール(排ガス対策)のために従来装備されていたエアポンプなどが
       省略された。これによりエンジン前方の整備性が格段に向上した。

      駆動系の変更
      ・従来3速であった、オートマティックトランスミッションが、待望の4速化。
      ・従来センシトルクと呼ばれたデファレンシャルギアがレンジャーデフと呼ばれる対策型
       に変更。

      足回りの変更
      ・フロントの足回りがメカニカアッティバと呼ばれる新形式に変更。これにより、従来過大で
       あった回転半径が減少し、取り回しが楽になった。
      ・アルミホイールが従来の14インチから15インチのディッシュタイプに変更。

      尚、この章では上記の特徴を併せ持つモデルを説明の便宜上「新規格車」と呼称します。
      また、車名や型式番号の変更も無く、次々と仕様変更を繰り返す「430」並びに「スパイダ
      ーザガート」は便宜上次の様に分類呼称することと致します。
      「430初期型」「430前期型」「430後期型」「430最終型」
      「スパイダーザガート初期型」「同前期型」「同後期型」「同最終型」


1989年 228(MT)発売[945万円]
      2.8リッターの「新規格車」先行発売。
      ロングホイールベースの大型ビトルボが登場。日本での228デビュー時は2ドアで2.8
      リッターの車はこの車だけだったので、まだ車名と現車仕様の整合性はとれていました。
      ビトルボ一族中もっともラグジュアリー且つ大柄な車であり、上位モデルのロイヤル(V8)
      とビトルボの間のセグメントを埋めるモデルでした。写真で一見すると「鈍」な印象を受け
      ますが、実物は低く身構えた精悍なフォルムで、細かいところもグレードアップされており、
      さすがはマセラティと我々を唸らせる名車。ボディの剛性感もガッチリした感じで、実にいい。
      日本では、発売当初はマニュアルミッション設定しかありませんでした。


       カリフ 発売[745万円]
       ビトルボSi 価格改定[695万円が595万円に]
       ビトルボ425i 価格改定[735万円が635万円に]
       ビトルボスパイダー 価格改定[690万円が630万円に]
       228(MT) 価格改定[945万円が830万円に]

      2.8リッターの「新規格車」第二弾。
      ビトルボ系で初めて伝統の「風の名前」を頂くカリフが出現。実体はスパイダーザガートの
      ハードトップ版スペシャル。ショートホイールベースの短いボディにちょこんと載ったキャビン
      が印象的な「小股の切れ上がったいい女」といった風情が漂うおしゃれな車。ある意味で
      この時期のビトルボ系を代表する名機として、メーカーも「後世に残る車」と標榜してました。
      そもそも、オープントップのスパイダー用として生まれたモノコックシャーシやボディ各部材に
      各部補強対策を施されたモノに「屋根」をくっ付けてますから、ボディ剛性はビトルボ一族で
      随一。操縦に自信のあるドライバーならば、ワインディングでも痛快無比のマシンです。
      尚、狭いながらも立派な革装リアシートがついていますが、残念ながら、国内法規により、
      ディーラー車では、二人乗り登録となっております。
      この時点で、在庫現行車種は大幅値下げ、後続新規格車の発表をうけてのものでしょう。


       222E (MT/AT)発売[620万円(MT)/635万円(AT)]

      2.8リッター「新規格車」の真打上陸。
      ついにスタンダードモデルも新規格にモデルチェンジ。2ドアで2.8リッターなのに222・・・
      この辺から訳が解らなくなってきます。実質的にはビトルボSiの後継機と見るべき車。
      尚、末尾の「E」は「EXPORT」の「E」でこの時点では輸出仕様であることのあらわれと
      見ることができます(ちなみに本国では単に「222」と呼称)。


        スパイダーザガート初期型 (MT/AT)発売[630万円(MT)/645万円(AT)]
       スパイダーザガート前期型 (MT/AT)発売[630万円(MT)/645万円(AT)]

      スパイダーも「新規格車」に。
      ビトルボスパイダーiの実質的後継機。が、ビトルボ時代にも左右のフロントフェンダー部に
      [ZAGATO]エンブレムが張ってあるため、中古車市場でも混乱している模様です。
      ビトルボスパイダーをスパイダーザガートとして販売しているケースは、かつて頻繁に見掛け
      たものです。尚、スパイダーザガートの呼称は日本独自の源氏名で、国際的には単に
      「マセラティ スパイダーi」と呼ばれている模様。また、上記の(初期型)・(前期型)の区分
      は詳細説明を参照して下さい。


       228 (AT)発売[825万円]
      大型ビトルボ228にも待望の4速オートマティックトランスミッション装備車がデビュー。
      すでに国際的には3速AT車は存在していまいたが、国内では4速装備を待った模様。
      この後は基本的に4速AT車のみの供給となりました。

       430初期型 (AT)発売[735万円]
       4ドアモデルも「新規格車」化。
      4ドアで2.8リッターなのに430・・・(泣)。
      ビトルボ425iの実質的な後継機。日本発売当初のモデルはどういうわけか全数US向け
      仕様であり、パッシブシートベルトなどの特徴的な装備が付属しています(詳細説明参照)。
      89年段階では価格表にも載っていず、サンプル輸入車の先行販売とも考えられます。


1990年 222SE (MT/AT)発売[685万円(MT)/695万円(AT)]
       スパイダーザガート後期型 (MT/AT)発売[735万円(MT)/745万円(AT)]
       カリフ 価格改定[745万円が795万円に]

      2ドア車が早くもマイナーチェンジ。主に外装イメージの変更が行われました。この変更に
      伴い、2ドアのスタンダードモデル222Eは222SEと名前を変えました。変更点は前後の
      バンパー等ですが、詳しくはそれぞれの詳細説明を御参照下さい。

       228 価格改定[825万円が865万円に]
      228の内装が若干リファイン(これが後期型で、メータークラスター内にウッドパネルが貼
      られたりした。各部の機構的な違いは無いといってよい。)され、それに伴う価格改定か?


1991年 430前期型 (AT)発売[735万円]
      この「430前期型」と呼称するモデルはマセラティの外装デザインコンポーネンツ区分では
      2ドアスタンダード車では222Eに相対するものです。但し、前後バンパーの上面には
       全幅に亘ってステンレス製のガーニッシュが張られ、2ドア車とイメージを代える事に成功
      しています。また、「430初期型」の特徴であった「US仕様」の要素がすべて取り除かれ、
      内外装がシンプルになりました。

       シャマル (6MT)発売[1385万円]
      ビトルボ系「風の名前」シリーズ第二弾にして、最速、最強の硬派なモデル。その心臓部
      はV8のDOHCツインターボ。その身に纏うボディはマルチェロ・ガンディーニの手により
      デザインされた(この人はあのランボルギーニカウンタックをデザインした人です)マッシブ
      なもの。街乗りも出来る穏やかさと、カミソリの切れ味、シャープな吹け上がりの二面性が
      際立ちます。縦横比バランスの妙が効いて、ワインディングでの走りもエキサイティング!
      ホイールベースはスパイダーやカリフと軌を一にするため、当店での分類上ではこれらの
      派生型としています。発売当時「マセラティひさびさのスーパースポーツ」として大反響
      を呼びましたが、私個人としては「マセラティ シュバスコ」や「マセラティ バルケッタ」等、
      ミッドシップリアルスポーツモデルが発売にならなかった事が悔やまれてなりません。
      尚、シャマルの本格的供給は翌92年からです。


1992年 222SR (AT)発売[695万円]
       222 4V (MT)発売[785万円]
       430後期型 (AT)発売[765万円]

      フラッグシップモデルたるシャマルの登場を受けて、そのデザインイメージを巧みに取り入れ
      た222SRが誕生。また、222 4VはSRと共用のボディに待望のV6DOHCユニットを
      搭載する後のギブリへの布石となる車。一時期発売の噂があった「マセラティ バルケッタ」
      やシャマルに装備されたものと同一イメージの16インチの星形ホイールが標準装備。
      一方、430の方はようやく222SEに相対するデザインイメージを持つ「後期型」に改変。
      トランクにチョコンと載った小さなリアスポイラーやAte製ABS(これは、デ・トマソ期ビトルボの
      中でも、後期型以降の430のみに装着)なども装備するようになりました。


1993年 222SR (AT)価格改定[695万円が595万円に]
       430後期型 (AT)価格改定[765万円が695万円に]
       スパイダーザガート (AT)価格改定[745万円が685万円に]
       カリフ (MT)価格改定[795万円が845万円に]
       228 (AT)価格改定[865万円が795万円に]
       シャマル (MT)価格改定[1385万円が1180万円に]


第三章:ビトルボ新世紀(第一次フィアット期)

1993年末あたりからは、本国のマセラティ社がフィアット社の指揮下に入った関係で車種の整理統合が進んで行きます。また、デ・トマソ時代にすっかり定着してしまった 「信頼性が非常に低ーい」との評判を払拭すべく、主に電気系統の改善、消耗部品の信頼性アップ等が行われたことになっています(笑)。で、雑誌なんかにこういうのが書いて あるもんで混乱してしまうのですが、この辺の改善が設計レベルから行われているのは、あくまでもこの後出てくるギブリ(の途中から)やクアトロポルテにおける話であって、 従来型の在庫併売車においては、デ・トマソ時代と、ほとんどそのまんまだとお考えください(まあ、デフが違うとか、一部車種には改良点もあるにはあるのですが・・・)。 いずれにしてもイタリア第一の大コンツェルンがバックについたのは、マセラティ社の前途にとっては明るい材料であったことにはかわりありません。


      ギブリ (5MT、のち4AT追加)発売[680万円(5MT)]
       懐かしい名前とともに帰ってきたのは、フィアットコントロール下初の新型マセラティです。
       待ちにまったスタンダードモデルのモデルチェンジ。従来の222系の実質的な後継機です。
      シャマルのイメージを湛えたブリスターフェンダーや、目に見えない電気系の改良などが全身
      に施され、新しい時代を予感させるマシンでした。デザインはもちろん、マルチェロ・ガンディ
      ーニ.。ついでながら、マセラティ界(そんなもんがあったか?)では往年のV8ギブリ(初代)
      と区別する場合、本モデルを便宜上「ギブリⅡ」と呼称していますが、当然2車の間には、
      構造上なんの関連性もありません。尚、ギブリの本格的供給は翌94年から。


      

1994年 430最終型 (AT)発売[630万円]
      4ドアモデルの430もようやく222SRのデザインイメージに相対する、「最終型」に発展。
      プロジェクターライトやボンネットスポイラーが装備され、すでに222 4Vに装備されていた
      16インチの星形ホイールをも与えられていました。

       222SR (AT)価格改定[595万円が615万円に]
       222 4V (MT)価格改定[785万円が745万円に]
       スパイダーザガート (AT)価格改定[685万円が598万円に]
       カリフ (MT)価格改定[845万円が715万円に]
       シャマル (MT)価格改定[1180万円が1050万円に]
       94年モデルより全車大幅価格改定。ギブリ及びクアトロポルテ出現への布石でしょうか?


1995年 430最終型 (AT)価格改定
       スパイダーザガート最終型 発売[630万円]


       クアトロポルテ (AT)発売[735万円]
      19年ぶりにフルモデルチェンジを果たした、伝統の名前クアトロポルテの新型です。
      先代のジウジアーロルックとは全く対照的に丸みを帯びたマイルドなデザインは、シャマル・
      ギブリに続いてマルチェロ・ガンディーニの作。名前こそクアトロポルテですが、系統的には
      430の後継機とみるべきで、5000GTに始まる450S譲りのV8シリーズは、ロイヤルで
      終焉を迎えてしまいました。


1997年 ギブリカップ (6MT)発売[788万円]
       クアトロポルテV6 (AT)発売[835万円]
       クアトロポルテV8 (AT)発売[1050万円]
       ギブリ (4AT)価格改定[738万円に]

      たった20台の超限定車ギブリカップが発売され、マスコミ各誌より絶賛を受けました。
      あらゆる面でビトルボクーペシリーズの最後を飾るにふさわしいコレクターズカーと云えます。
      また、このカップ出現時期と同時期に売られていた最終型の6速マニュアルミッション車こそ、
      メーカーが「ギブリGT」と呼称しているものです(但し正規ディーラーでは、公式にはこの呼称
      を用いていませんでした)。

      また、クアトロポルテには、真打ちとも云える待望のV8エンジン搭載車が出現。
      従来のモデルはクアトロポルテV6と呼ばれるようになりました。クアトロポルテはこの段階
      でも大幅なグレードアップが図られています。クアトロポルテの名を頂く以上、世界最速の
      4ドアサルーンであって欲しいと願う全世界のマセラティファンはこのV8車の出現により
      ひさびさに溜飲を下げたことでしょう。尚、この時期のV8車はオットー・チリンドリ(イタリア語
      で8気筒の意)、V6車はセイ・チリンドリ(同6気筒の意)というのが、正式な呼称です。


第4章:ビトルボ超世紀(フェラーリ期)

1998年 クアトロポルテエボルツィオーネV6 (AT)発売
       クアトロポルテエボルツィオーネV8 (AT)発売

      本国で、マセラティ社の実権をフェラーリ社が直接握ることとなり、大幅に信頼性をアップ
      する為の改良箇所、実に800カ所(!)と、当時激烈にアナウンスされた、ガンディーニのク
      アトロポルテ、最終バージョン。各部の機械的信頼性向上がはやり一番のウリでしょう。
      その分、前モデルに比べ、アクの強さが大幅に薄れてしまったのは時代の趨勢。
        まあ、メーカーとして生き残るためには、国際的洗練も必要だったのですね。ともあれ、当時
      の4ドアサルーン界にあっては、走行性能、見た目ともに、充分な競争力を持たされたと云
      えましょう。

       3200GT (6MT/4AT)発売
      当時、全世界の古くからのマセラティファンには、待ちに待ったニューモデルと云えました。
      風の名前シリーズ以前のシリーズ命名法として用いられてきた、「・・・・GT」のシンプルな呼
      称も復活して、私の様なオールドマニアには「名前だけで、買い」と思わせたものです。
      この3200GTの出現を最後に、ついにビトルボ系と呼ばれる、「マセラティツインターボ装備
      車群」の系統はその長い歴史にピリオドが打たれました。高性能車の世界にひとかどの時
      代を作った「ターボチャージャー」の技術も、時代の流れで火が消えつつあるのは、やはり
      寂しいものです。しかしながら、ツインターボマセラティ独特の圧倒的な「ターボパンチ」を
      愛するクルマ好きは、まだまだ、我が国にも多数いらっしゃいます。ビトルボ系マセラティには
      紆余曲折がありました。その間、メーカーたるマセラティ社自体も流転し続けておりました。
      そのような中にあって、この素晴らしいマシン達を届けてくれ続けた、彼の地の陽気なイタリ
      アーノ達と、辛抱強く正規輸入を続け、現在でも確固たる部品供給体制を堅持している、歴
      代メインディーラーには、本当に感謝したいものです。


 フェラーリ期にはその後も、クーペ・スパイダー・5代目クアトロポルテ・グランスポルトなど、フェラーリF430直系自然吸気エンジンを搭載した未来の名車たちが続々と生まれました。 また、第2次フィアット期に突入し、そして出現した現行の「グランツーリスモ」、特に4、7リッターの「グランツーリスモS」にひとたび乗れば、それが、初代ギブリSSの正当なる後継車 である事が一発で理解できる仕上がりであることが、ワタシのようなオールドマニアにも、わかります。普段、旧いマシンにしか興味が持てないこのワタシが「心を動かされた」んです。
  しかし、そういった「感動」も、ビトルボ製造期の苦闘の20年あってこその「伝統の継承」があって創めて生まれるものと、「グランツーリスモS」のスロットルを踏みながら、しばし考えていました。 「やっぱ、マセラティはいいわ、いつの時代の、どのマシンも」。興奮で手のひらにうっすらかいた「汗」がそう申していたように思います。帰りがけはいつものビトルボマセラティ。癒されるんだよなあコレも、また。

 長時間の読破、誠に有難うございます。「ビトルボマセラティ達よ、永遠なれ!」

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