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マセラティクアトロポルテと暮らしてみませんか~ガンディーニの疾駆するオブジェ:エンジンについて② 「水冷」冷却系統のキモ

 水冷90度V型6気筒(8気筒(DOHC4バルブ インタークーラー付ツインターボ、これが、ガンディーニ・クアトロポルテのエンジンスペックですね。

 この項では、上記エンジンスペックの中から冒頭の「水冷」について、詳解いたします。現代のクルマでは極めてアタリマエの、猿人(もういいって)冷却機構なんですが、 クアトロポルテさまのV6エンジンはまったくよく冷えます。「ビトルボ時代」から連綿と続く「オーバーヒート伝説」、ありゃいったいなんだったんでしょう?てなもんです。 V8エンジンも、だいたい(笑)冷えます。大丈夫、ほんと。当店の送り出すすべてのマセラティは大丈夫なのに、どうして新車以来、この悪しき伝説がバッコしているのでせう(笑)?

 実は、エボ前のV6エンジン車には「ビトルボ時代」より引きずる(たいがい欠点:泣)以下のキモがあります。

冷却系のキモ①:電動ファン(熱で、ファンスイッチやリレーが故障、カプラー焼損で不作動)
冷却系のキモ②:サーモスタット(新品品質の不安定による、短寿命。寿命予測は不可能)
冷却系のキモ③:ウオーターポンプ(品質劣悪、予想外の寸法精度、バリ等加工不良多し)
冷却系のキモ④:各ヒーターホースとその継手(アルミ継手の腐食、ホース交換困難)
冷却系のキモ⑤:ラジエターサブタンク(品質極悪、超低寿命、但し価格は低廉)
冷却系のキモ⑥:ラジエター本体(一品ごとに、コア交換の上、耐圧試験が必要)

 で、さらに、4カムDOHC車になってからの特徴として、
冷却系のキモ⑦:シリンダーヘッドガスケット(新品時の組み付け不良、暖気省略走行により抜けかかってるマシン多し)

 ・・・なーんだ、やっぱダメだあ(笑)。ちょっと考えたダケでこんなにキモが出てくるとは。ともあれ、これだけやらないと、真夏に安心して乗るコトはできません。
(以下、キモそれぞれの説明をば)

冷却系統のキモ①:電動ファン(熱で、ファンスイッチやリレーが故障、カプラー焼損で不作動)
 そもそも、ほかの当時のイタリア車にこんなに低い水温(水温計で80℃~90℃)で真夏に走行できるものがありましょうか?そのカギの一つがコレ。大型の電動ファンが2基、 ブン回り続けます。エボ前V6の電動ファンは(個体差はありますが)水温計が85℃を超えたあたりで2基同時に「ON」になり、真夏などはエンジンを停止しても所定の温度以下に下がるまで、 しばらく回り続けます。また、エアコンを「ON」にして、コンプレッサーが回っている間は、その水温の高低に関わらず、必ずファンは「常時作動」になり、すでに水温が所定の温度以下なら、 エアコン「OFF」により2基のファンは一旦停止します。

 電動ファンがシッカリ回らなくなる主な原因には、電動ファンリレー(ファン一基につき一個割り当て)の内部不良(この場合、リレーがハネた方のみ不動になる)か接触不良、 ラジエターに付いているセンサースイッチ(水温を検知してファンの動作と停止を制御)の不良(2基とも不作動になる)、ファン本体から伸びているハーネスのカプラー(接合部) の接触不良による焼損(カプラーが焼けた方のみ不動になる)、などがあります。ファン本体のモーター不良も稀にありますが、ホントにマレ。これは、各ファンカプラーを抜いて、 そこにバッテリーを直結してやればスグに分かる。

 また、不動原因が上記のうちでリレーかファンセンサーにある場合は、エアコンを「ON」にして走行すれば、「何事も無かったかのように」走れます。但し、 エアコンがちゃんと動く場合のハナシですヨ、もちろん。

 実はこれらのトラブル、222や430などデ・トマソ期モデル(当店のは大丈夫)には頻発したものですが、リレー台座ギボシの改良、カプラーの見直し、広いエンジンベイ (クアトロV6)による放熱効果などが相まって、フィアット期以降のモデルでは、さして問題にならなくなっているものです。しかし、「経年」という重要な要素を見落としてはなりません。 旧いクルマを足とするためには、(マセラティに限らず)予防整備は重要です。

 ワタシは、ほぼ20年落ちの某国産(軽自動車)スパイダーを、ヨメの足として所有しておりますが、昨年の秋、ワタシ自身がオークション会場まで往復110Kmほど走行の後、 ヨメが千葉の我が家へ帰るため、引き渡しましたところ、20分後に電話が掛かってきて「今、環八のアンダーパスの中でいきなりトマって、どうにもならないぴょん」とか云ってるので、 即レスキューに。行ってみると「オルタネーター」が終わり。この辺の国産車は電圧計はおろか、チャージ不良を示すインジケーターランプすら付いていないので、「終わる」時は本当に突然なもんでコマりますね。 まあ、そろそろ10万キロだしな。このディーラーも迅速かつ的確な対応をしてくれたので、助かりました。
 「うー、今月も余計な出費があ!(泣)」って、お客さんの気持ちがよく分かりますネ。余談ばっかし。

補足:電動ファンユニットの変遷
 電動ファンユニットの変遷に関するご説明。基本的に3種類あるようです。
①:前期型~後期型までのV6用
②:エボ前V8用
③:エボV6&V8用

 それぞれの特徴
①:デ・トマソビトルボ時代から使われてきたユニット。動作開始時に大きく電圧変動があり、その動作音(風切音:ブーン)と水温の振幅(75~90℃の間、ファンの動作・ 停止に伴い比較的大きく振れる)がかなり大きいのが特徴。ファンユニットそれ自体の信頼性は高く、カプラー部の改造により安心できる。
②:ファンプロペラ部の形状変更により、このモデルから風切音が著しく激減。ファンの動作タイミングが①より若干遅いのが特徴だが、心配は要らない。
③:ラジエター本体の全面的変更に伴い、ファンユニットも筐体ごと大改変。シュラウド状の空気導入ダクトが装備され、さらに改良されたプロペラにより、動作音も静粛になり、 水温計90℃でピタっと安定するのが特徴。上記①装備車に長年のっていたユーザーにとっては、ファンの動作音が聞こえない上、水温が高め安定なので、夏場などはかえって心配になる(笑)。
 V8車では(マセラティ車)禁断の100℃近くを指すこともあり得る。大丈夫だけどね(笑)。各カプラーの造りも現代的なものになっており、安心感は抜群です。但し、 ラジエター本体とオイルクーラーが「合体メカ」化されているので、この辺をはずす場合は根性が必要になっちゃった。「また、余計なコトを・・・」感も我々的にはひとしおです。


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冷却系統のキモ②:サーモスタット(新品品質の不安定による、短寿命。寿命予測は不可能)

 これは、V6車とV8車で大きく違う部分です。

 V6車は(エボ前もエボも)例によって、デ・トマソビトルボ由来のサーモスタットを採用しており、その交換時にはサーモスタットハウジングのガスケットも含めて、各部のOリング交換が必要になります。 サーモスタットの耐久性もさることながら、このハウジング周りの腐食や劣化により、その交換を困難にしているケースが多いです。だから後述のヒーターホースとともに、新車時から一度も手をつけてきていない (ハマりそうだから、逃げてきている)中古車の個体は大変多いと思われる項目です。各部の点検により、サーモ不良と断定した場合は、まず一旦分解の上、サーモスタットをお湯を入れたナベに入れ、 「煮沸」します。73℃で開けばOKなのですが、ダメになってるものは、ここで開かないか、開きが甘いんです。交換後一年未満で、パーになった(しかも真冬に)ことがあるため、 新品パーツにも問題がありそうです。そうかと思うと、10年なんでもないモノもありますので、パ-ツ個体差も多そうです。

 V8車においては、エボ前モデルもエボもV6用とは全く造りが違います。サーモスタットがアルミケースの中に封入されているタイプで、メッタなコトでは交換を要しません。

 よく、「旧車の心得」みたいな本の中で、オーバーヒート時は、「エアコンを切って、ヒーターに切り替えろ、エンジンは止めずにアイドリングで様子を伺え」などといった記述がありますが、 マセラティにはその方法論がどれも当てはまらないように思います。オーバーヒートの原因は色々とありますので、「水温に異変(通常より高くなってる)を感じたら、即クルマを脇に寄せ、エンジン停止」 これが、「マセラティ乗り」用の心得です。そのために、通常の水温が他の一般的な欧州車に較べて20℃近くも低く設定してあるのですから。マセラティのエンジン冷却に関する思想はちょっと独特なものがありますね。 ものすごく熱を発するエンジンをありとあらゆる手段を講じて「ムリヤリ早めに冷やす」ということでしょう。その反動が各部電気周り、とりわけバッテリーやオルタネーター(発電機)の寿命に影響しているというわけです。

 ハナシはそれましたが、真冬なのにオーバーヒートして乗れないし、ヒーターの効きが悪い方は一度サーモスタットを始めとした、冷却系統を徹底的に叩く必要がありそうですね。


冷却系統のキモ③:ウオーターポンプ(品質劣悪、予想外の寸法精度、バリ等加工不良多し)
この項、ブログ連載時にどういうわけか、飛んじゃってた(ダレも気づかなかった?)ので、加筆しておきました。

 これも、V6車とV8車でまったく違う部分です。

 V6車は上記のサーモスタット同様、デ・トマソ期からのキャリーオーバー品を使用しており、新品でも「取り付け孔にバリがあって、加工し直さないと取付不能」だったり、 「ガスケットが一回り縮んでる」とか、「タイミングベルト取り付け軸の直角度不良」で、あやうく、ヘッドを壊すとこだったコトもあるし、どういうわけか「メクラ蓋」状のモノがついてて (おそらくは、厳冬期に冷却水が凍ってしまった時に、凍って膨張し、体積の増えた冷却水がシリンダーケース内のウオータージャケットを内部から突き破らぬ様に、ここが破れて「ヒューズ」 の役目をするものだと思われる:昔のアメ車なんかによく付いてた)そこから、いきなり冷却水が滲んだりと、色々ヒドイ目に逢わされてきました(泣)。オレたちゃ、何にも悪くない。

 V8車用は、全車「シャマル」のと一緒。そうとうデカイ物です。品質は上記と「以下同文(笑)」。あっ、エボのも一緒ですから。

 ほとんどの当店ユーザーさんは、ウオーターポンプが問題になったコトすらないと思いますので、あまり、気にしてない方も多いと思いますが、それは納車前に散々当店が「カブって(泣)」 差し上げてるからなんですよ(笑)。とにかく、ウオーターポンプの交換は丁寧に行います。今まで交換してきていないポンプを交換しようとすると、取り付けボルトなんか、もうガッチリと腐食していて、 ヘタに回すと何本も折れちゃうし(これの復旧は地獄作業:笑泣)な。本当に大変です。
 これらのウオーターポンプを駆動するプーリーはタイミングベルトの背中で回しておりますので、基本的には、タイミングベルトと同時に交換するのが宜しいかと思います。まあ、そこまでもたないケースもありますが、 「これだからイタリア人のシゴトはしょうがない」と高らかに、そして陽気に笑い飛ばしてください(・・・って、ヤッパだめ?)。


冷却系統のキモ④:各ヒーターホースとその継手(アルミ継手の腐食、ホース交換困難)
 このヒーターホースとかウオーターホースとかの題名がついた「水ホース関係」は大小長短併せて十数本ありますが、ここでは、主にエンジンシリンダーヘッド(Vバンク)の谷間、 インジェクションユニットの下にある、通常、外からは見えにくい位置のホース類とその継手関係のお話です。新車より5年程度の間では通常は問題ないと思われますが、使用頻度に「波がある」 使われ方(数ヶ月乗らなかったかと思うと、いきなり遠出の旅行に高速をカッ飛ばして使ったり)をすると、ホースと継手の接合部分から冷却水が滲んだりしてきます。アルミ製の継手(ゴムホースも) は、国産車などの品質に較べてその精度、面相度、工作が格段に劣り、加えて腐食耐性も低いので、長時間乗らずに放置しますと、ホースの裏では継手が「虫喰い状」に腐食してまいります。目に見える、 ラジエターのアッパー&ロワーホースは、ホース、継手ともにかなり肉厚ですから、まあ、メッタなことでは「逝き」ません。が管径が細く肉厚も薄い、ここでの主役ヒーターホース類には、 もっともハードに水圧が掛かるためソコから滲むというわけです。

 エボ前V6の場合、デ・トマソビトルボ由来の後述するラジエターサブタンクが膨らんじゃってダメになってると、車検時などに交換されますが、ここがちゃんと直ったことにより、 ホース継手部から漏れが始まることもあります。ある意味、「ダメな」サブタンクは冷却系の「ヒューズ」みたいな意味が(結果論ですが:笑)あるんですね。ですからこのサブタンクがキチンとした (膨らまない)V8&エボ系は経年のすすんだ今、かえってヒーターホースには気を使った方がいいでしょう(ところが、高いんだ、コレが:泣)。

 自動車には、内部を液体が循環する経路がいろいろとありますね。この冷却系統もその一つ。人間の体の循環器系統の老化や生活習慣病と理屈はほぼ一緒なんです。但し、マシンですから、 自然治癒力は何かの偶然が起こらぬ限り、やっぱり期待できません。しかも患者(患車か?:笑)はもの云わぬ、気高きマセラティさま。こちらでいろいろと予防策を考えてあげないといけません。 本当は、一番ダメに見えるところだけを直すのはマシンが新しいうちはいいのですが、全体的に老化が進んだものには、有効ではないのです。つまり、マシンにとっての「アンチエイジング」とは、 一つの系統ごとに老化箇所を「全とっかえ」するということです。電車も、船も、航空機も皆そうやっているから、いっけん何事も無く、数十年の酷使に耐えている様に見えるんです。

 余談ですが、数年前にネット上のある書き込みに、「マイクロ・デポは部品交換しすぎなのではないか」といった主旨の非難をされていたことがありました。ワタシはじっとこらえました。 マセラティや旧いフェラーリなどの大規模な部品交換や整備は、ハッキリ云って「ハマるのを覚悟の上」で行なうものなんです。時間も掛かり、工具は壊れ、怪我もいたします。作業を阻害する 交換部品のサビや腐食による固着、新品部品の不良などをひとつひとつネバリで乗り越えつつ、同じ作業を二度手間、三度手間と何度もトライしながら、「最良の結果」にこだわってジリジリと進めるものです。 マイクロ・デポの経営者たるワタシたちの「商売」にとっては、まったく利益に寄与しないものなんです。すべては当店を支えてくださるユーザーのため、納車時整備では、部品は原価、 われわれの作業工賃は一切頂かずに精一杯施しております。全国の旧いマシンを愛するユーザーさん、そのすべてに、弊社の理念がご理解頂ける日がいつの日にか来ないものかと念願いたしておりますよ。


冷却系統のキモ⑤:ラジエターサブタンク(品質極悪、超低寿命、但し価格は低廉)

 ラジエターサブタンクのハナシですね。・・・って、こんな、うすーいネタでいったい何行書けっていうのかしら(笑)。

 まず、エボ未満クアトロポルテについている、デ・トマソビトルボ由来の、このサブタンク、スグ膨らみます!歪みます!しまいにゃ割れます!(笑泣)
対処法は唯一つ、こまめな新品交換。コレに尽きます。但し、前述しました様に、ここダケを「攻撃」するのは、却って逆効果になってしまう恐れもあるため、現在、冷却系統の整備履歴が怪しい、 エボ未満クアトロポルテをお持ちの方は、このブログ見たからといって、スグに交換しなくて結構ですヨ。毎日始動時にサブタンクの冷却水量をチェックの上、水道の水を足してください (飲料用ミネラルウオーターは不可)。LLC濃度が薄くなってきた場合は、ホームセンターでも容易に手に入る、「トヨタ純正キャッスルLLC(緑)」で充分ですから、これをタマに足してください。 ラジエターの水がかなり減るのは、サブタンク以外の要素(ヘッドガスケットがイッてるとか、ヒーターホースが漏ってるとか、ヒーターコアがダメとか)が考えられますので、ちゃんと直しましょう。 スゴくカネ掛かりますけど。間違っても、ホームセンターで売ってる「水漏れ防止剤」のたぐいは使わないよう。取り返しのつかないコトになる可能性があります。

 さて、当店では、このサブタンクが4期に分かれているコトを確認いたしております。

①:オリジナルビトルボについていた新品時に乳白色のもの。この時期のものは結構長持ちした。

②:リターンホースの継手部の位置が変更になり、それに伴い、リターンホースも(L型)と称する形状のものに変更する必要が生じた。この②時期がクアトロポルテ前期型時期に相当すると思われる。

③:材質変更になり、新品時の成型色が半透明に。明らかに「ポリ系」の素材にみえる。見た目も安っぽい。出現当初、「これで、寿命がさらに延びるのか?」と半信半疑で期待をしたが、期待通りに 「やっぱダメ(笑)」。ぜんぜん持たなくなっちゃった。これが、クアトロポルテ後期型あたりの時期。この時期に供給されていた補修用パ-ツとしてのサブタンクもこの時期のもの。だから全部ダメ。 「マセラティ原理主義者(笑)」の我々としては、しょうがないけど。この時期のサブタンクには「苦い思い出」が数多くあるので、あんまり思い出したくない(泣笑)。

④:で、(対策っつーか、なんつーか)もとの材質に戻ったと。でも心なしか①②の時期のモノよりも全体的に肉が薄い気がする。現在、市場に流通している殆どのクアトロポルテは、 数次のサブタンク交換を経てきているので、大概この④が付いている。

補足:エボルツオーネ以降のサブタンク
 その存在をまったく忘れておりました(笑)。えーと、それはね、「忘れるくらいに問題無し」ということなんで、まあ、時々は冷却水量とその汚れ具合をチェックしてあげてください。 ちなみに、エボのサブタンク&キャップは同時代のアルファロメオやランチアに使われているものの流用の様です。


一口コラム:サブタンクを見切るタイミング→まずドレーンホースを見よ!
 当店では、納車時整備において、すべてのサブタンクとキャップ、そしてキャップの根元に付くサブタンクドレーンホースを真っ透明な新品に交換してお納めしております。それには意味があるんです。 ひとつはエンジンルームの美観(アホ:笑)のため。もうひとつは、サブタンクの注入口部が異常変形していないかどうかの判断を、シロウトさんにも容易に出来るようにするためなんです。 この透明なホースを経由して、たびたびドレーン口から(オーバーヒート状態ではないのに)噴出したLLCが流出し、右フロントフェンダーのフェンダーライナー裏を通って地上に垂れているマシンは、 この透明ホース内にLLC独特の鮮やかな緑色を呈しますので、「あっ、こりゃタンクダメだわ」とすぐに分かるという寸法です。ウチのお客さん方、知ってた(納車時には一通りご説明しているんですが、みんな忘れてるよなあ:笑)?
 なんで、当店では、こんなに神経質に冷却系統に拘っているのかというと、これがマセラティの「イタ車にしては管理しやすい低めの水温」の「元締め」だからです。マセラティを知ってる同業者諸兄もここの重要性は認識してるハズ。

 ここで、小学生の理科の問題。

問い「水は何度で沸騰するでしょう?」

答え「100℃」

 ・・・ですね。

「じゃ、どうして自動車エンジンの水温は、100℃を超えても容易には沸騰しないのでしょう。」
これは、高校物理の問題かな。よーわからん、ワタシはコレでも文科系(笑)。

「エチレングリコール水溶液だから沸点が水とは違う(上がる)」正解の一部ですね。
「水は加圧することにより、沸点があがる(100℃で吹かなくなる)」これが正解の続き。

 これで、冷却系統の(特に漏れによる圧力抜けの)管理と整備がいかに重要か、お分かりになって頂けたと思います。

 ”キーンコーンカーンコーン”「きりーつ」「礼!!」お疲れ様でした。


冷却系統のキモ⑥:ラジエター本体(一品ごとに、コア交換の上、耐圧試験が必要)

 これは基本的に3種あり、

①:エボ未満V6用
②:非エボV8用
③:エボV6&V8用

 ラジエター自体はどれも結構しっかりしてます。

 ①は多くの場合、当時の正規ディーラー出身車では、新車をおろしてから早い段階で予め対策されているようです。ラジエター業者のステッカーが張ってあります。地方出身車(地方ディーラーでおろしたクルマ) では、そのまま出しているケースも多いです。当店では、そろそろリビルドが必要と判断した場合は「カッパー(銅)コア」できっちり交換の上、一品一品、耐圧試験(規定圧の倍以上の圧力をかける) を入念に実施の上、取り付けています。

 ②と③は今までのところ問題が出ていませんが、特に③では、冷却系統とは関係ない他のコア部材と抱き合わせた構造になってるため、分解作業時に余計なテマヒマがかかります。アルミ同士が結合してある 「継手」部分は緩める時に必ず「ナメ」ます。これが始まると「大ハマリ」の前兆なんだよなあ(泣)。まっ、マイクロ・デポでは結局やりますけどね、どこまでも、大ハマリ覚悟で(笑)。


冷却系のキモ⑦:シリンダーヘッドガスケット(新品時の組み付け不良、暖気省略走行のため、抜けかかってるマシン多し)
 これは、ビトルボ系マセラティが4カムDOHC車になってからの特徴として、挙げておきます。

 3バルブヘッドの時期はVバンクを覗くと、冷却水がスタッドボルトを伝わって上がってきた上に、バンクに「チャプチャプ(笑)」と「みどりのお水が」溜まっているのが見えたので、比較的、 スグ見つけやすかったのですが、4カム車(クアトロポルテも該当)の場合、パッと見、わかりづらいのがヘッドガスケットの「抜け」。フツーのクルマでは、ヘッドガスケットが抜けるというのは、 オーバーヒートさせる以外の原因では、まーず、ありませんが、マセラティの場合、フツーじゃないので、オーナーの扱い方次第では、早期にダメになります、とは申しましても、一番多いのは、 冷却水路にエンジンオイルが混じるタイプの抜け方で、冷却水にラード状物質が徐々に混じってくるのが、コレです。全力走行時に完調のものと較べると、力がウスいのが分かりますが、 コレに気づくヒトは相当エキスパートの方だけでしょう。現在市場に通常出回ってる多くのクアトロポルテ&3200GT&ギブリは多かれ少なかれ、この症状が出ているものです。 あまり気にするコトもないでしょう。看過できないのは、エンジンオイルラインに冷却水が回ってるヤツで、このタイプのガスケット抜けをおこしているものをツカまされたら、 相当な根性が必要(笑)になりますので、購入時には、チェックが必要です。エンジンオイルのディップスティックをひきぬいて、白っぽいラード状物質が大量にスティックについて出てくるものは、 エンジン内部やターボシャージャーに潤滑不良に起因する、深刻なダメージを与える(あるいは、すでに逝っている:笑)可能性がありますので、ヤメておいた方が無難でありましょう。 また、どこも漏れてないのに、ものすごく冷却水が減るクルマは大概コレです。まっ、いずれの場合もキチンとヘッドガスケット交換を施し、ついでにバルブクリアランス調整(タペットシム交換)をやれば、 バッチリなんですが、これは非常に高価につきます。現在、当店の送り出す4カム車では、少しでも疑わしいものはすべて納車時にヘッドの分解整備を行なって、お納めいたしておりますので、ご安心を。

 はい、とりあえず、「冷却系統のキモ」のご説明はコレで完結。エンジン周りの解説はまだまだ、まだ続くのであった。いったい、いつ終わることやら。

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