水冷90度V型6気筒(8気筒(DOHC4バルブ インタークーラー付ツインターボ、これが、ガンディーニ・クアトロポルテのエンジンスペックですね。
この項では、上記エンジンスペックの中からレイアウトを示す「90度V型」について、マセラティロードカーの歴史を絡めて(半ば強引に:笑)詳解いたします。
はい、このV型90度というバンク角は、マセラティ伝統のレイアウトですね。ちなみに、第二次大戦後に製造された、ロードカー(いわゆるGTカー)には、戦後初期の「A6シリーズ」 から始まって、直列4気筒、直列6気筒、V型8気筒、V型6気筒などの基本レイアウトがありました。
このうち、フロントエンジン時代のフォーミュラーワン用マシン「250F」の「直列6気筒」エンジンを源流とするのが、「3500GT」「ミストラル(デュオポスティ)」 「3500GTIS(セブリング)」などの市販GTカー群。
レーシングスポーツプロトタイプの名車「450S」の「V型8気筒」をロード用にモディファイしたものが、「5000GT」「ギブリ(初代)」「メキシコ」「インディ」「ボーラ」 「カムシン」「キャラミ」「クアトロポルテ(3台目:ガンディーニルックの前のヤツ)」「ロイヤル」等々の各車に排気量を適宜変えながら積まれていきました。
そうして、70年代のシトロエン提携時代に生まれた「V型6気筒」。これは、そもそもシトロエン社が、当時開発中のフラッグシップモデル(シトロエンSM)用の心臓として、 マセラティ社にエンジンのみ開発を依頼してきたもので、上記の「V8」の2気筒を「ブッた切って(もちろん半分冗談ですヨ:笑)」おそるおそる奏上したら、そのまんま通っちゃったモノ。 で、当時出現した「ベイビーミウラ」こと、「ランボルギーニウラッコ(これは、ミッドシップ車なのに、プラス2の後席がついてるという点で画期的だった)」迎撃用(笑)に、 これまた「ボーラ」を「ブッた切って(コレばっか:笑)」、「メラク」をこしらえるにあたって、後席スペース確保のためにこのV6を積んだという経緯があるわけです。ちなみに、 まったくの余談ですが、このエンジン搭載車は、「シトロエンSM」「マセラティメラク」の他に、フランスの極超少量生産メーカー「リジェ社」の「JS2」というのがあります。 こんなマイナー車も30年前の「スーパーカーブーム」の折には、例の「サーキットの・・・」という有名マンガの劇中に登場する、結構どーでもいいサブキャラ(さて、ダレでしょう。 このクルマの前にはフェアレディZ432Rに搭乗)が搭乗してたという理由だけで、プラモ化されてたから商魂恐るべし(笑)・・・。
あっ、先を急ぎましょ。スグ余談になっちゃう悲しいサガ。
で、このマセラティ社的に云う「メラク用」エンジンは、当時の水準では非常にコンパクトに仕上がっていたため、デ・トマソ傘下になってからの「ピッコロマセラティ(小さなマセラティ)プロジェクト」では、 この90度V6というレイアウトに着目したわけです。
ここから先はまったく、ワタシの推論(創作に近い?)なんですが、当時の文献を紐解くと、まず「ビトルボシリーズ」は「BMW3シリーズ」の市場で闘わせようとしていたらしいんですね。 で足回りはセミトレーリングアームとマクファーソンストラットで完全に3erのパクちゃん(笑)。でも、当時のBMWは直列の4か6気筒しか手持ちに無かった。ここで、おなじみの「差別化」戦略が登場し、 「高級な(部品点数と組立工数が直列エンジンに比してとっても多くなるから)」V型エンジンを採用、しかもヒジョーにコンパクトなんで、思いっきり低重心に出来てノーズも薄く作れるからいい感じ。 で、とりあえずのアドバンテージは確保(笑)。敵(BMさん)は、シングルカムエンジンなんで、ここは、コストダウンのためにも、ウチもシングルカム(SOHC)で、まっいいか(笑)。 でも、気筒あたり3バルブ(70年代後期にはホ○ダのオートバイ用エンジンには、コレがもうあった。CB400TとかCB400Nなどのホークシリーズに搭載:2気筒だけど)くらいにはしとこう、 カッコ付かないし。うーん、後発切り込み隊長としては、なんつーか、こう、もうひとつ「アタックポイント」がほしーよなあ。と考えて、「ターボチャージャー」でも付けてみる?ってなハナシが出て、 いやー、敵さんには、もう、ずいぶん前からターボ車(BMW2002ターボ)あるもんなー、なんてコトになり、「ぢゃ、2個付けてみる?」「(開発会議の一同)そーしよー、そーしよー(大団円)」 といった感じなのではなかったのかと(笑)。そうして、「世界初」の「ツインターボ装着市販車(そーなんですよ、ト○タより先なんですから:有名な愛知のト○タ博物館には、2代目ソア○開発時に 研究用として購入した初代ビトルボが温存されているらしいです。展示してないけど:泣)」であるところの「マセラティビトルボ」は誕生したものとワタシは思っております。だって、名前が 「ビトルボ(イタリア語でツインターボ)」なんですから、なんつーか、そのまんまではないですか。よっぽど、嬉しかったに違いありません。「コレで、どうだ!」といった感じでしょう。ちなみに、 このターボチャージャーは初代のときから、「KKK」でも「ギャレット」でも「日立」でもなく、ボーイング社からジェットエンジンのオーバーホール、やってヨシとお墨付きをもらってる 「IHI(石川島播磨重工業)」製、メチャクチャ立派な会社。もちろん我が祖国(笑)で製造されたモノです。極初期のモノには非常にトラブルが多かったと先達の大先生方からは聞いておりますが、 3期目に突入し、(まともな)インタークーラーが付いた222時期以降のものは、オイル管理さえキチンとすれば、まったくシッカリとしたもので、まさに日本製の面目を保っておりますです、ハイ。
で、フィアット期に突入する頃には、ドイツ勢(あの保守的なメルセデスでさえ)も日本勢も「DOHC(ツインカム)はあたりまえ」の時代が到来していましたので、「ぢゃ、ヤルか、しょうがねー(笑)」 と開発したのが、シャマル用のツインカム気筒当たり4バルブ(これは、クアトロポルテ用とはクランクシャフトが違うけど、文章で違いを説明してもどうせわからないと思うんで省略。 まっ、クアトロ用の方がマイルドな味といった感じ)と222 4v用のツインカムV6をベースに、より近代的な「燃料調整システム」と「点火システム」を取り付けたのが、当項の主役、 クアトロポルテ用のV8・V6エンジンというわけです。この流れのエンジンを最後まで搭載していたマセラティ車が、エボV6&V8と3200GTで、ここまでが「ビトルボ仲間」と云えましょう。
まあ、それぞれに部品互換性は、実際のところはあんまり無いんですが、ガンディーニクアトロポルテのエンジンは「450Sのエンジンをデチューンした、ボーラとかのスーパーカーエンジンを」、 「メラク用に2気筒をちょん切ったヤツに」「シングルカム3バルブヘッドを載せ、カムタイミングをチェーン駆動から、コックドベルト(これがいわゆるタイミングベルト)駆動に換え、近代化し」た上で 「ツインターボをつけ」たヤツに、モアパワーのためと「インタークーラー(ターボに過給する前に吸入気を一旦冷却することにより、より多くの量、空気が圧縮できるんでパワーが上がるんです)」 も追加しちゃったものに、電子制御フューエルインジェクション(燃料噴射)&イグニッション(点火装置)を装備して、もう一度「4カム(V型エンジンのカムシャフトは4本)化、しかも気筒あたり 4バルブ(吸気2・排気2)で作ってみました」、というものです。以上。
はあはあ、ちょっと疲れた。上の段、試験に出ますから、ヨーク再読して理解を深めてください(笑)。
ヒトに歴史ありと云いますが、ひとつのエンジンにも色々と歴史があるもんですね。旧い歴史のあるメーカーがアナログ的思考(メカ優先)にこだわって造り続けるととこういったスゴいものが生まれるんですね。